アラートは成長の招待状。18年の現場で辿り着いた、インフラエンジニアの「障害対応学」

もっち

  • 関東大手SIer勤務
  • 10システム、仮想サーバ約200台の基幹系システムが稼働する仮想化基盤のインフラ運用リーダー

以下3点について、ブログで役立つ情報を発信

  1. インフラ技術・システム運用
  2. キャリア・マネジメント
  3. エンジニア実務・仕事術

インフラエンジニアの仕事において、最も技術力と精神力が試されるのが「原因不明の障害」です。ログを見ても、監視データを見ても、明確な答えが見つからない。そんな「詰み」の状態をどう突破するか。

18年の現場経験から辿り着いた、論理的かつ戦略的な「障害対応のフレームワーク」を、実体験をもとに解説します。

この記事の想定読者

  • 障害対応で何をしてよいかわからない
  • 現場マネージャはどのような考えをもとに障害対応しているか知りたい

この記事を読むことでのメリット

  • 障害対応時にタスクの優先順位付けができる
  • 障害対応時の現場マネージャの考え方を知ることができる
目次

初動のプロトコル:コーヒー一杯が防ぐ「判断ミス」

アラートが鳴り響いた瞬間、エンジニアが真っ先にすべきことは、キーボードを叩くことでも、ログを漁ることでもありません。

影響範囲の即時特定

まず、「今、誰に、どんな影響が出ているか」を1分以内に把握します。サービスが継続できているのか、全停止しているのか。この判定がその後の優先順位をすべて決めます。

精神の「デフラグ」

影響範囲を確認したら、あえてコーヒーを一口飲みます。 これは冗談ではなく、リーダーとして「凪(なぎ)」の状態を作るための重要な儀式です。パニック状態での判断は、しばしば被害を拡大させます。一拍置くことで、脳を「反射」から「思考」のモードへと切り替えます。

論理的切り分け:OSとハードウェアの「境界線」を引く

以前、仮想サーバ上のWindows OSが突如再起動を繰り返す事象に遭遇しました。イベントログには「予期せぬシャットダウン」の記録のみ。OSベンダーに調査を依頼しても「原因不明」という回答。

このような時、多くの現場では「OSの不具合」として片付けられがちですが、真実を見極めるには「レイヤー構造」に沿った冷徹な切り分けが必要です。

OS再起動の根本原因がハードウェアファームウェアのバグであることを示すレイヤー構造図

メモリダンプという「動かぬ証拠」

私は、OSベンダーと協力し、メモリダンプ(障害発生時のメモリの内容を記録したもの)の徹底的な解析を行いました。

  • 仮説: OSが勝手に再起動しているのではなく、ハードウェア側からの「予期せぬ割り込み」によって再起動させられているのではないか?
  • 検証: ダンプ内の処理シーケンスをミクロ単位でトレース。結果、特定のタイミングでハードウェアのマイクロコード(ファームウェア)から不正な命令が飛んでいることを特定しました。

当初は不具合を否定していたハードウェアベンダーに対し、この「処理の足跡」をエビデンスとして突きつけることで、最終的にファームウェアのバグを認めさせ、修正リリースの発行まで漕ぎ着けることができました。

リーダーシップ:混乱を「タスク」に分解して統治する

障害対応中、チームを崩壊させないための秘訣は、「やることを明確に分担させること」です。

役割目的
解析担当ログやダンプを深掘りし、技術的な原因を追究する
監視担当現状の稼働状況やリソース推移を常にモニタリングする
報告担当顧客や社内への進捗報告、エスカレーションを専任する

「全員で画面を覗き込む」のは最悪の手です。リーダーは、メンバーを適切なポジションに配置し、一人ひとりが「今、自分は何をすべきか」に迷わない状態を維持しなければなりません。

報告の学問:スピードは「精度」に勝る

「原因がわかってから報告しよう」――この考え方は、インフラエンジニアの信頼を損なう最大の要因です。

顧客が最も恐れているのは、障害そのものではなく「状況が見えないこと」です。

  • 1分の一報: 原因が不明でも「現在、〇〇の事象を確認、調査中」と即座に伝える。
  • 訂正を恐れない: 続報で内容が変わっても構いません。情報のアップデートを止めることの方がリスクです。
  • ビジネスの言葉で語る: 「DBのコネクションが……」ではなく「現在、〇〇の機能が使えない状態です」と、顧客の視点に立って伝えます。

まとめ:障害を「資産」に変えるために

障害対応は、終わった後の「振り返り」で初めて完結します。

  • ポストモーテム(事後検証)の実施: 誰かを責めるのではなく、仕組みをどう変えれば防げたかを議論する。
  • ドキュメント化: 今回のような「OSとハードの切り分け手順」をチームの資産として残す。

障害対応は、エンジニアを最も成長させてくれる「最高の教材」です。冷静な判断と、エビデンスに基づく執念、そしてスピード感のある報告。これらを磨き続けることが、信頼されるインフラエンジニアへの道だと信じています。

本記事では、18年の経験から得た「障害対応のロジック」について解説しました。しかし、実際の現場では、論理だけでは語り尽くせない「人間の葛藤」や「リーダーとしての孤独」がありました。

深夜のデータセンターで、焦るメンバーを前に私が何を思い、なぜあえて「コーヒーを飲む」という選択をしたのか。

技術解説のサイドストーリーとして、一人のエンジニアの内面的な記録をNoteに綴りました。ロジックの裏側にある「泥臭い人間模様」に興味がある方は、ぜひあわせて読んでみてください。

▼Noteで読む:リーダーとしての葛藤と覚悟の物語 深夜のアラートと、一杯のコーヒー。リーダーの私が「背中で語る」と決めた夜

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この記事を書いた人

もっちのアバター もっち インフラエンジニア/サービスマネージャ

・関東大手SIer勤務
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