「動いて当たり前」という静かな誇り。インフラ運用の本質的な価値とSREの視点

もっち

  • 関東大手SIer勤務
  • 10システム、仮想サーバ約200台の基幹系システムが稼働する仮想化基盤のインフラ運用リーダー

以下3点について、ブログで役立つ情報を発信

  1. インフラ技術・システム運用
  2. キャリア・マネジメント
  3. エンジニア実務・仕事術

システムが何事もなく動いているとき、私たちの存在は空気のようになります。

月次の報告会ではアプリケーションの華やかな新機能が注目を浴びる一方で、インフラの報告は「異常なし」の一言で終わることも少なくありません。 しかし、その静寂こそが、高度な技術と緻密な設計によって生み出された最高水準の成果であることを、私たちはもっと誇るべきではないでしょうか。

今回は、インフラエンジニアが直面する評価の非対称性をロジカルに分析し、SREやPlatform Engineeringの視点から、私たちが提供している本質的な価値を再定義します。

この記事の想定読者

  • システム運用の仕事に理不尽さを感じている
  • 運用業務に対するモチベーションが上がらない

この記事を読むことでのメリット

  • 動いて当たり前と呼ばれるシステム運用の価値に気付ける
目次

1対Nの構造が生む、責任の非対称性

なぜ、平時は空気のように扱われる一方で、一度障害が起きると、あれほどまでに苛烈な再発防止と原因究明を求められるのでしょうか。これは感情論ではなく、ビジネス構造上の影響範囲(Blast Radius)の非対称性に起因しています。

  • アプリケーションの不具合:特定の機能や一部のユーザー層への影響に限定されることが多い(1つの機能の停止)。
  • インフラの障害:その基盤上で動く全てのシステム、全てのビジネスプロセスを停止させる(N個のシステムの停止)。

インフラが止まるということは、ビジネスそのものが停止することを意味します。顧客が求める厳しい追及は、それだけインフラがビジネスの絶対的な前提条件として認識されている証拠です。

私たちは、個別の機能ではなくビジネスの継続性という巨大な責任を背負っています。

SREが定義する信頼性という機能

かつての運用は100%停止させないことを目指す、いわば忍耐の仕事でした。しかし、モダンなSRE(Site Reliability Engineering)の考え方は、この静けさに新しい価値を与えました。

信頼性は、プロダクトにおける最も重要な機能である

たとえ革新的な新機能が追加されても、頻繁にエラーが発生したり、レスポンスが極端に遅ければ、ユーザー体験(UX)は崩壊します。

私たちはエラー予算(Error Budget)を管理し、過剰すぎない最適な信頼性を技術的に制御することで、ビジネスのリリース速度と安定性のバランスを担保しています。

何も起きないのは、偶然の結果ではありません。SLO(サービスレベル目標)に基づいた緻密な監視設計と自動化によって、私たちが意図的に作り出した成果なのです。

Platform Engineeringへの進化:守りから加速へ

さらに今、インフラ運用は基盤を守るフェーズから、Platform Engineeringという新たなステージへ移行しています。

これは、インフラを単なる依頼に応じて構築する対象ではなく、開発者がセルフサービスで利用できる内部プラットフォームとして提供する考え方です。

私たちが目指す静寂とは、単に障害がないことだけではありません。開発者がインフラの複雑さを意識することなく、素早く価値を市場に届けられる状態を作ることです。

インフラが空気のように感じられるのは、私たちが高度な抽象化を完成させ、開発者の生産性を最大化させているからに他なりません。

報告会の静寂は、最高品質のQAである

報告会で議論が起きないのは、顧客から無視されているのではなく、顧客の脳内からインフラの懸念というノイズを完全に消し去ることに成功している状態を指します。

顧客がインフラのことを一切考えずに、ビジネス戦略やアプリケーションの改善に100%の思考を割ける時間。それこそが、私たちが提供できる最大の付加価値です。

議論の余地がないという状態は、プロフェッショナルによる最高品質の保証(Quality Assurance)そのものと言えるでしょう。

おわりに:プロフェッショナルの矜持

「動いて当たり前」

この言葉は、私たちにとって屈辱ではなく、最高の勲章です。

誰にも意識させないほど洗練されたプラットフォームを構築し、ビジネスの土台を支え切る。その静かな誇りこそが、インフラエンジニアという職種の真髄であり、AI時代においても決して代替されることのない本質的な価値です。

次に報告会で静寂が訪れたら、心の中で自信を持ってください。 「今月も、我々の技術がビジネスを加速させた」と。

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この記事を書いた人

もっちのアバター もっち インフラエンジニア/サービスマネージャ

・関東大手SIer勤務
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