
もっち
大手SIerに18年勤務。オンプレ・クラウド計200台規模の大規模インフラ(10システム)を統括する現役のサービスマネージャーです。
システム運用・インフラ技術、マインドセット、キャリア戦略など、現場で役立つ情報を若手エンジニアへ向けて発信中。


もっち
大手SIerに18年勤務。オンプレ・クラウド計200台規模の大規模インフラ(10システム)を統括する現役のサービスマネージャーです。
システム運用・インフラ技術、マインドセット、キャリア戦略など、現場で役立つ情報を若手エンジニアへ向けて発信中。
私は現在、約200台の仮想サーバーと10の基幹システムを支える現場で、サービスマネージャーとして活動しています。エンジニアチームを率い、日々、システムの安定稼働とビジネス価値の最大化に向き合っています。
ネットの質問サイトを覗くと、インフラエンジニアという職種に対して「地味でキツそう」「障害対応が怖い」「将来はクラウドやAIに奪われるのでは?」といった、若手の方々の切実な不安が溢れています。
しかし、大規模システムを預かるリーダーの視点から言えば、インフラエンジニアは単なる「設備の番人」ではありません。「技術とビジネスの翻訳者」であり、社会のインフラをデザインする戦略的なポジションです。
今回は、皆さんが抱きがちな5つの疑問に対し、現場のリーダーという立場から本音で回答します。
インフラの現場は、一度障害が起きれば怒涛のスピードで対応が求められます。私が現場配属となった初日も、まさに大規模障害の真っ只中でした。飛び交う専門用語、張り詰めた緊張感。正直、圧倒されて「自分には無理だ」と感じたことを今でも鮮明に覚えています。
しかし、リーダーの立場で新人を迎える今、私が重視しているのは「最初からバリバリ作業ができること」ではありません。それよりも、「何が起きていて、自分は何をすべきか」を整理しようとする姿勢です。
新人の頃、私は職場に初めて導入された作業に対して、自ら業務フローを書き起こし、仕事の手順を定義しました。「このアラートが出たら、まずここを確認する」というフローを明文化したのです。これが、後にチーム全体の改善活動の基盤となりました。
リーダーからのアドバイス
焦って技術を詰め込む前に、まずは目の前の小さな作業を「誰でもできるように定義する」ことから始めてください。それが、大規模システムを動かすマネジメントの原点です。
「運用は地味で報われない」という声もありますが、それは受動的に作業をこなしている場合の話です。ITサービスマネージャーの視点では、運用こそが「最もクリエイティブな改善の宝庫」です。
かつて私は、深夜に鳴り響く不要なアラートに悩まされていました。これを放置せず、根本原因を調査して「実害のないノイズ」を徹底的に抑止しました。結果として、不要な工数が削減され、チーム全員が早く家に帰れるようになったのです。
自分の技術一つで、自分と仲間の「時間」という最も貴重なリソースを創り出す。これ以上のやりがいがあるでしょうか?
また、関係者が数十人も関わるような大規模な移行作業を、1分の狂いもなく完遂し、最後に顧客へ「予定通り、無事に完了しました」と報告する瞬間。あの瞬間の達成感は、プロジェクトを統括するリーダーだけが味わえる最高の報酬です。
「全部AWSやAzureになるなら、ハードウェアの知識はいらない」というのは大きな誤解です。私は100台以上のサーバーを物理から仮想へ移行する(P2V)経験を積んできましたが、そこで得た「低レイヤーの知識」は今でも私の最大の武器です。
クラウドも、その裏側では必ず物理的なハードウェアが動いています。低レイヤーでの処理を理解していれば、仮想サーバーの挙動が不安定になった際、「物理層のどこでボトルネックが起きているか」を正確に予測できるようになります。
また、資格取得(ネットワークスペシャリストやAWS SAPなど)も重要です。資格は単なる「認定」ではなく、「共通言語」です。
資格学習を通じて用語を深く理解することで、顧客や他分野の専門家とのコミュニケーションが劇的にスムーズになります。サービスマネージャーとして「橋渡し」をする際、この共通言語の有無が仕事の成否を分けます。
| 知識の種類 | マネージャー視点での価値 |
| 物理・低レイヤー | トラブル時の「予測力」と「判断スピード」に直結する。 |
| IT資格(共通言語) | ステークホルダーとの「信頼関係」と「翻訳精度」を高める。 |
単純なコマンド入力や監視設定は、AIやIaC(Infrastructure as Code)によって自動化されていくでしょう。しかし、それは「作業」がなくなるだけで、「エンジニアの価値」がなくなるわけではありません。
ITサービスマネージャーの役割は、「ITに詳しくない顧客・経営層」と「エンジニア」の間に立ち、それぞれの意図を翻訳することです。
この両者を繋ぎ、システムを単なる箱ではなく、顧客視点での「価値あるサービス」としてマネジメントすること。この「翻訳とサービスデザイン」の領域は、どれだけAIが進歩しても、人間にしか担えません。
大規模システムのリーダーをしていれば、プレッシャーを感じない日はありません。一瞬の判断ミスが多大な影響を及ぼす世界です。
そんな時、私を支えているのはアドラー心理学の「課題の分離」という考え方です。
「ハードウェアが故障すること」は自分にはコントロールできません。それは「物理の課題」です。しかし、「故障が起きてもサービスが止まらないように設計すること」や「起きた時に迅速に対応すること」は「自分の課題」です。
『7つの習慣』でいう「影響の輪」の中に集中し、自分が制御できることに全力を尽くす。それ以外の、自分にはどうしようもないことで悩むのをやめるのです。

18年この世界で走り続け、現在はリーダーとしてチームを率いていますが、インフラエンジニアという仕事は、知的好奇心を満たし続けられる「最高のパズル」だと確信しています。
複雑な技術を組み合わせ、ビジネスの課題を解き、人々の「当たり前の日常」を裏側から支える。このダイナミズムは、一度味わうと離れられません。
もしあなたが今、現場の荒波の中で迷っているなら、どうか「自分はサービスをデザインする翻訳者である」という誇りを持ってください。あなたの小さな改善、丁寧な業務フローの整理が、いつか巨大なシステムを支える大きな力になります。
共に、このエキサイティングな「サービスマネジメント」の世界を楽しみましょう。
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