減点方式の現場で「加点」を勝ち取る技術|システムが動いて当たり前の世界で評価されるインフラエンジニアの立ち回り

こんにちは、ブログ運営者の「もっち」です。
大手SIerにてインフラエンジニア、そしてサービスマネージャーとして18年間、オンプレミスからクラウドまで約200台の大規模インフラ基盤を統括してきました。
突然ですが、日々の業務の中でこんな「虚しさ」や「悔しさ」を感じたことはないでしょうか?
- 「1年間トラブルなく無停止で運用したのに、評価面談では『普通(現状維持)』と言われた……」
- 「毎日手順書通りにミスなく真面目にこなしているのに、全然給料が上がらない……」
- 「たまに障害を起こして徹夜で復旧作業をしている人の方が、なぜか社内で目立って評価されている気がする……」
- 「100回成功しても誰も褒めてくれないのに、たった1回のオペミスやアラート見落としで顧客や上司から激怒された……」
インフラエンジニアという仕事は、まさに「動いていて当たり前、止まったらマイナス評価」という究極の減点方式の世界です。
水道の蛇口をひねって水が出ても誰も水道局に感謝しないのと同じで、システムが正常稼働している間、私たちの存在はまるで「空気」のように扱われます。
真面目にシステムを守っている人ほど、「自分は何のためにこんなに神経をすり減らしているんだろう……」と心が折れそうになりますよね。
しかし、現在サービスマネージャーとして部下の評価シートをつけ、昇給や昇格を決める立場になった私から、断言したいことがあります。
「減点方式のインフラ現場であっても、圧倒的な『加点』をもぎ取る方法は確実に存在する」ということです。
評価されないのは、あなたの技術力や真面目さが足りないからではありません。「減点方式の世界における、正しい戦い方とアピールの作法」を知らないだけなのです。
今回は、現場18年の経験と評価者視点のリアルな本音から、理不尽な現場で確実に評価を勝ち取るための「思考法・立ち回り術・実績の可視化テクニック」を余すことなくお伝えします。
この記事の想定読者
- ミスなく無停止運用しても、評価面談で普通と言われ悩むインフラ担当
- 動いて当たり前の減点方式現場で、正当に評価されたい運用エンジニア
- 真面目に手順書をこなしているのに、昇給やキャリアが進まない若手
この記事を読むことでのメリット
- 「障害を未然に防いだ実績」を数値化し、週報や面談でアピールできる
- マネージャー目線の評価基準が分かり、減点現場で加点評価を狙える
- 作業員枠から抜け出し、設計・構築など上位チームへの抜擢を掴める
なぜインフラエンジニアは評価されない?「究極の減点方式」のカラクリ
まず敵を知ることから始めましょう。なぜ私たちの仕事は、これほどまでに減点されやすいのでしょうか?
【アプリ開発 vs インフラ運用の評価構造】
■ アプリ開発(加点方式の世界)
0点(現状維持) ──[新機能リリース / 売上向上]──> +100点(加点!)
■ インフラ運用(減点方式の世界)
100点(動いて当たり前) ──[障害発生 / オペミス]──> 0点・マイナス点(減点…)
アプリ開発(加点)とインフラ運用(減点)の構造的違い
Webサービスやアプリの開発は「新機能がリリースされた」「UIが改善されて売上が120%になった」といったプラスの成果(加点)が、顧客や経営層の目に見えやすい構造です。
一方で、インフラは「社会基盤(ライフライン)」です。
道路に穴が開いていないこと、電車が時刻通りに走ること、サーバーが止まらないこと。これらはビジネスを行う上での「前提条件」であり、達成できてようやく「スタートライン(100点満点中の100点)」とみなされます。
そこから障害が起きるたびに点数が削られていくため、構造的に加点がつきにくいのです。
「何も起きない=仕事をしていない」と見なされる悲劇
さらに残酷なのが、優秀なインフラエンジニアが事前に対策を施し、完璧に運用している現場ほど「何も起きない」という点です。
- ディスク容量の増加ペースを計算して事前に拡張していた
- カーネルパラメータをチューニングしてメモリリークを防いでいた
- ハードウェアの予兆検知をして事前にパーツ交換を手配していた
これらはすべてプロフェッショナルな仕事ですが、非エンジニアの顧客や他部署から見ると「トラブルも起きず、毎日定時で帰っていて暇そうだな」「何も起きてないのに、なんでこんなに運用保守費が高いんだ?」と映ってしまう悲劇が起こります。
評価されない人が陥る「静かな優等生」の罠
現場で真面目に働いているのに正当な評価を得られない若手エンジニアは、ほぼ例外なく「静かな優等生」の罠にハマっています。
「ミスなく手順書通り」はスタートライン(評価±0点)
「私はこれまで1回も手順書を間違えたことがありません!」
これは素晴らしいことです。しかし、シビアな現実をお伝えすると、マネージャーや会社から見ればそれは「給与に見合った義務を果たしている状態(評価±0点)」にすぎません。
会社が「昇給」や「上の役職(リーダー)」を与えるのは、与えられた枠組みをこなす人ではなく、「枠組みそのものを改善し、チームや顧客にプラスの価値をもたらした人」です。
手順書通りに作業できることは、加点ではなく「マイナスを防いだだけ」と判定されてしまうのです。
評価する側(マネージャー)は「見えない成果」を評価できない
「言わなくても、上司は自分の日頃の頑張りを見てくれているはず……」
そう信じたい気持ちは痛いほど分かります。
しかし、サービスマネージャーのリアルな日常をお話しすると、マネージャーは顧客との予算交渉、他ベンダーとの調整、突発インシデントの対応、要員計画などに追われ、部下の日常作業の一挙手一投足を観察する余裕は1ミリもありません。
さらに、マネージャー自身も人事部門や役員に対して「なぜ彼(彼女)を昇格・昇給させるのか」を客観的な証拠(数字や実績)でプレゼンしなければなりません。
本人が成果を言語化して上げてくれない限り、マネージャー側も「推薦したくても会社を通すための材料がなくて評価できない」というのが現場のリアルな本音なのです。
現役マネージャーの本音:私が「加点」をつけたくなるエンジニアの共通点
では、評価を下すマネージャーは一体どんなエンジニアに「加点」をつけたくなるのでしょうか? 私が18年間見てきた中で、現場で頭一つ抜けて評価されるエンジニアには明確な共通点があります。
派手なトラブルシューターより「火元を消す人」を評価したい
世の中には、障害が起きたときに徹夜で颯爽とコマンドを叩き、システムを復旧させてヒーロー扱いされる人がいます。
もちろん復旧力は大事ですが、組織として本当に価値が高いのはどちらでしょうか?
Aさん(トラブルシューター型):
火事が起きてから消防車を呼び、ずぶ濡れになりながら消火する(目立つが被害は出ている)
Bさん(プロの予防保守型):
そもそも火が出ないように、タコ足配線を直し、ホコリを掃除しておく(目立たないが無傷)
マネージャーが本当に喉から手が出るほど欲しいのは、間違いなくBさん(未然に防ぐ人)です。
トラブルシューティングは「起きてしまった損失をゼロに戻しただけ」ですが、予防保守は「顧客のビジネス停止リスクを未然に排除した」という巨大な価値があります。
加点を勝ち取るエンジニアは、この「地味な予防保守の価値」を言葉と数字にして上司に届ける技術を持っています。
「上司の脳のメモリ」を節約してくれる人
マネージャーの脳内リソース(CPUとメモリ)は常にカツカツです。そんな中、
- 課題を見つけた際、「どうしますか?」と丸投げせず、「A案とB案があります。工数とリスクからA案を推奨しますが進めてよいですか?」とYes/Noで答えられる形で持ってくる人
- チーム内の若手が困っているときに、スッと声をかけて解決し、現場の摩擦(人間関係や作業の滞り)を解消してくれる人
こうした「自分の脳のメモリを解放してくれる存在」に対して、マネージャーは強烈な信頼と感謝を抱きます。「次の案件のリーダーはあいつに任せよう」と加点をつけるのは、まさにこういう人です。
現場で「加点」をもぎ取る4つの実践アプローチ
では、明日からの現場で具体的にどう動けばいいのか? 減点方式の現場で確実に加点を生み出す「4つの実践アプローチ」を伝授します。
【加点を生み出す4つのアプローチ】
①「起きなかった障害」を数値化する(予防保守の実績化)
② 手順書・運用フローをアップデートする(仕組みの改善)
③ 他チーム・顧客との「摩擦係数」を下げる(他者評価の獲得)
④ 実務のTipsやトラブル知見を共有する(チームの資産化)
① 「起きなかった障害」を数値化する|予防保守の実績アピール法
インフラで加点を取るための最大奥義は、「自分が動いたことで回避できたリスク」を言語化することです。
- ダメな報告
「日次巡回を実施しました。異常なしです。」 - 加点になる報告
「日次巡回にて、DBサーバーのログ増加ペースが通常時の3倍になっていることを検知しました。
このままでは今週末に容量枯渇(サービス停止)のリスクがあったため、原因となっていたデバッグログの出力を停止し、ディスク障害を未然に回避しました。」
「異常なし」で終わらせず、【検知した予兆】+【放置した場合の損失】+【実施した予防措置】をセットで日報や週報に記載してください。
これだけで、あなたの作業は「単なるルーティン」から「システム停止を防いだファインプレー」に化けます。
② 手順書・運用フローのアップデート|仕組みでミスを撲滅する
現場で作業していて、「この手順書、コマンドのパスが古いな」「ここでいつもみんな迷うんだよな」と感じたことはありませんか?
それを放置せず、手順書を修正してプルリクエストや改訂版を出すことは立派な加点行動です。
💡 現場18年の勘所:
「手順書を修正しました」だけではアピールとして弱いです。
「手順書のコマンドをフルパス記載に変更し、実行ログのサンプルを追記したことで、作業者の確認迷いをなくし、チーム全体の月間作業工数を約3時間削減しました」と、チーム全体への波及効果を添えて報告しましょう。
③ 他ベンダー・アプリ担当・顧客との「摩擦係数」を下げる
インフラエンジニアの現場は、アプリ開発チーム、ネットワークキャリア、ハードウェア保守ベンダーなど、多くの関係者との「責任の押し付け合い(境界線問題)」が頻発します。
通信エラーが起きた際、「インフラ側は正常です。アプリ側の問題じゃないですか?」と冷たく突き放すエンジニアは、たとえ正論であっても現場の空気を悪くし、評価を落とします。
加点を取るエンジニアは、「インフラのFWログを確認したところパケットは通過しています。
アプリ側のログでConnection Timeoutが出ている可能性があるので、DBのコネクションプール設定を一度確認してみていただけますか?」と、一歩踏み込んだアシストをします。
💡 客先常駐(SES)や社内SE(情シス)へのアドバイス:
顧客の担当者や社内ユーザーから「〇〇さんに相談すると話が早い」「いつも助かっています」という感謝の声が1つでも自社の上司の耳に入れば、それはどんな自己アピールよりも強力な加点材料になります。第三者の推薦ほど強い評価の武器はありません。
④ 自宅ラボや実務のTipsを共有|チームの知の拠点になる
自分が現場で調べたトラブルシューティングのコマンド、エラーコードの対処法、検証環境で試したTipsを、個人のメモ帳(ローカル)に眠らせておくのはもったいなさすぎます。
社内のWikiツール(Confluence、Notion、Teams等)にサクッと投稿し、チームに共有しましょう。
「自分の知識をオープンにして組織全体の底上げができる人」は、現場リーダーやマネージャー候補として真っ先に名前が挙がるようになります。
【コピペ可】週報や評価面談で使える!「実績アピール」言い換えテンプレート
「自分の日々の地味な作業を、どうやってアピール文に落とし込めばいいか分からない……」という方のために、そのまま使える「言い換えビフォーアフター」を用意しました。
日常業務を「加点実績」に変換するビフォーアフター
| 普段の地味な業務 | 評価されない表現(Before) | マネージャーが唸る加点表現(After) |
|---|---|---|
| ログ確認・容量監視 | 毎朝のシステムログ監視を実施し、異常のないことを確認した。 | ログ容量の推移からディスク枯渇リスクを事前検知し、ログローテーション設定を見直してシステム停止障害を未然に回避した。 |
| アラート対応 | CPU高負荷アラートの静観対応を複数回行った。 | 頻発していた一時的なCPUスパイク(月30件)の閾値設計を見直し、不要なアラート発報をゼロ化。当直メンバーのアラート疲れと対応工数を削減した。 |
| パラメータシート修正 | 指摘されたパラメータシートの誤記を修正した。 | パラメータシートの入力規則とチェックリストを整備。レビュー手戻り回数を平均3回から1回に減らし、設計フェーズの工数を約10%圧縮した。 |
| 作業手順書の更新 | 古くなっていたバックアップ取得手順書を更新した。 | 手順書の表記ゆれを解消しコマンド実行結果のサンプルを明記。新任メンバーでもミスなく単独作業が可能な運用標準化を実現した。 |
| 他チームからの問い合わせ | アプリチームからの通信不可の問い合わせに対応した。 | アプリ担当者とパケットキャプチャを用いて迅速に切り分けを実施。インフラ外(FWルール)のボトルネックを特定し、顧客リリース遅延を回避した。 |
上司が人事・役員を通せる「3つの数字」の出し方
評価面談でマネージャーを味方につける最大のコツは、「上司が役員や人事にそのままコピペして説明できる『3つの数字』を添えてあげること」です。
【実績を数字にする3大アプローチ】
1. 時間(工数):作業時間を月〇時間削減した、切り分け時間を〇分短縮した
2. 件数(ミス・アラート):不要アラートを〇件削減した、手順ミスをゼロ件維持した
3. 影響範囲(金額・規模):〇台のサーバーに適用した、全〇名のチーム全員が使える仕組みにした
「頑張りました」「意識しました」という主観的な言葉を完全に排除し、「この改善により、チーム月間〇時間の工数削減を達成しました」と報告書に書く。
これだけで、上司は「よし、これを根拠に上の承認を取ってこよう」とあなたの強力な味方になってくれます。
まとめ:減点の世界だからこそ「加点を作る技術」が一生モノの武器になる
インフラエンジニアの仕事は、決して誰からも感謝されない理不尽なだけの仕事ではありません。
- インフラは構造的に減点方式だが、「見えない予防保守」を可視化すれば確実に加点できる
- 手順書通りの作業はスタートライン。評価されるのは「仕組みを改善し、リスクを減らした人」
- 火を消すヒーローより、「火元を消してトラブルを起こさせない人」が組織の真の宝
- 報告には必ず「時間・件数・回避できた損失」の数字を添えて、上司が評価しやすい材料を渡す
この立ち回りを身につけると、日々の仕事の景色がガラリと変わります。
「今日も何も起きなくて暇だったな……」ではなく、「今日も自分の仕掛けた予防保守のおかげで、200台のシステムが無傷で稼働したぞ!」と、自分の仕事に誇りを持てるようになります。
減点方式の荒波を乗り越え、自分の価値を正しく周囲に届ける「現場力」を身につけて、ぜひ替えの利かないプロフェッショナルエンジニアへとステップアップしてください!














