【インフラ設計】HAクラスタのデータの持ち方比較:共有ディスク vs レプリケーションの違いと選定基準

もっち

大手SIerに18年勤務。オンプレ・クラウド計200台規模の大規模インフラ(10システム)を統括する現役のサービスマネージャーです。

システム運用・インフラ技術、マインドセット、キャリア戦略など、現場で役立つ情報を若手エンジニアへ向けて発信中。

保有資格

ITサービスマネージャー、
ネットワークスペシャリスト
情報処理安全確保支援士
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インフラエンジニアとして実務に入り、サーバーの冗長化(クラスタ)構成を設計する際、必ず頭を悩ませるのが「データ」の持ち方です。

「サーバーを複数台並べるのはわかるけれど、具体的にどう稼働させるの?」「Active-StandbyとActive-Activeって、どう使い分ければいいの?データの持ち方で何が変わるの?」

こうした疑問を抱えたまま運用や設計レビューに臨むと、先輩エンジニアたちの会話についていけず、悔しい思いをすることもあります。

システムの一部に障害が発生してもサービスを継続できる「可用性」を高める一方で、データの衝突や遅延による「データの不整合(データの破損)」を防ぐことが、クラスタ技術の本質的な難しさです。

データの持ち方は、クラスター全体の可用性、コスト、パフォーマンス(データの同期遅延)、そして「データの整合性」の難易度を左右する極めて重要な設計要素となります。

この記事では、実務で設計レビューに臨む若手から中堅インフラエンジニアに向けて、HAクラスターを支える2つの主要なデータの持ち方「共有ディスク型」と「レプリケーションディスク型」に焦点を絞り、それぞれの特徴(仕組み、メリット、デメリット、選定の基準)について、徹底解説します。

この記事の想定読者

  • HAクラスタ設計や設計レビューに臨む若手〜中堅インフラエンジニア
  • 冗長化構成における最適なデータの持ち方や選定基準を知りたい人

この記事を読むことでのメリット

  • 共有ディスク型とレプリケーション型の特徴や違いを深く理解できる。
  • インフラ環境やアプリの特性に応じた適切なディスク設計力が身につく。
  • 整合性リスクやコストなど、設計時のトレードオフを比較検討できる。

クラスターの基本概念から知りたい方は、以下の概要記事を確認し、まずはクラスター技術の種類と、それぞれの特徴を確認してみてください。

目次

共有ディスク型(Shared Disk / Shared-Everything)の仕組みと特徴

共有ディスク型の構成とデータ管理の仕組み

クラスターを構成するすべてのサーバー(ノード)から同時にアクセス可能な、独立した「外部ストレージ(SANやNASなど)」を別途用意する構成です。データの実体は1つ(外部ストレージ内)に存在します。

  • メリット: データの実体が1つであるため、データの整合性が保ちやすいのが最大の長所です。オンプレミスの堅牢なシステムでは定番の構成であり、データの衝突を防ぐための複雑なアプリケーション設計や排他制御が不要です。
  • デメリット: 高価な外部共有ディスク装置を購入する必要があり、初期コスト・維持コストが高くなります。また、共有ディスクそのものが故障するとシステム全体が停止するため、ディスクアレイの二重化など、共有ディスク自体の冗長化が必須となります(単一障害点(SPOF)にならないように設計する)。
  • 主なユースケース: データの整合性が厳格に求められる基幹データベース(Oracle RAC、SQL Server Failover Cluster Instanceなど)、大規模ファイルサーバー。

レプリケーションディスク型(Shared-Nothing / Data Replication)の仕組みと特徴

レプリケーションディスク型の構成とデータ管理の仕組み

各サーバーがそれぞれ自分自身の中に専用のディスク(ストレージ)を持ち、ネットワーク経由で常にデータをリアルタイム同期(ミラーリング)する方式です。各ノードは完全に独立したディスクを持っています。

  • メリット: 高価な共有ディスク装置が不要なため、コストを抑えて構築でき、クラウド環境(AWSやAzureなど)でも構成しやすいのがメリットです。外部ストレージ装置がSPOFになるリスクがありません。
  • デメリット: ネットワークの帯域消費や同期のオーバーヘッド(負荷)を考慮する必要があります。また、ネットワーク遅延や障害によってデータの同期に遅延(ズレ)が発生すると、フェイルオーバー時にデータの不整合(古いデータに戻るなど)を招くリスクが共有ディスク型より高くなります。特にデータの衝突を防ぐための、高度なアプリケーション設計や排他制御が必須となります。
  • 主なユースケース: データの整合性よりも、高パフォーマンスや拡張性が求められるWebサーバー、ステートレスなAPIフロント。外部ストレージ装置を使用しにくいクラウド環境での実用的(Pragmatic)な冗長化。

💡 クラウド設計における現在地(テクニカル補足)

「オンプレ=共有ディスク、クラウド=レプリケーション」という単純な二元論の時代は終わりつつあります。現在ではクラウド環境でもマネージドな共有ストレージサービス(AWSのAmazon FSx、Azure Shared Disksなど)が提供されており、クラウド上で共有ディスク型HAクラスタを組む選択肢も一般的になっています。インフラ設計の際は、インフラ環境の制約だけでなく、アプリケーションが求めるデータ整合性のレベルに応じて柔軟に使い分けることが重要です。

【徹底比較】共有ディスク型 vs レプリケーションディスク型

実務でどちらを採用すべきか判断するための比較一覧です。案件の要件定義や基本設計のフェーズでよく天秤にかけられます。

比較項目共有ディスク型レプリケーションディスク型
主な目的可用性の確保(整合性最重視)可用性の確保 + コスト・拡張性
コスト(リソース効率)高価(外部ストレージ装置が必須)安価(既存ノードのディスクを活用)
クラウド適用性クラウド側の共有ストレージサービスの選定が必要高い(容易に構成可能)
データの不整合リスク比較的容易(データの整合性はストレージ側)難解(複数台同時書き込み、同期遅延リスク)
通常時の性能低下あり(ストレージアクセスの遅延)あり(ネットワーク同期のオーバーヘッド)
障害時の性能低下原則なし(同スペックの待機系へ移行)あり(残ったサーバーの負荷が急増する)
キャパシティ設計難易度簡易厳格なキャパシティ・ネットワーク設計が必須
適用サービス例基幹DB、ファイルサーバーステートレスなWebフロント、APIサーバー

まとめ:アプリケーションの特性を見極めて最適なディスク設計を

冗長化構成において、データの持ち方(ディスク構成)の設計は、可用性とデータの不整合リスク、複雑性、精度、そしてコストのトレードオフです。

共有ディスク型は、データの整合性が最重要となるステートフルなアプリケーションやデータベースにおいて、オンプレミスの堅牢なシステムを構築するのに適しています。

一方、レプリケーションディスク型は、コストを抑えて冗長化を実装したり、外部ストレージ装置を使用できないクラウド環境で実用的(Pragmatic)な解として適しています。

設計において「冗長化する」と決めただけで終わらせず、その先にあるアプリケーションの特性(データのステートフル / ステートレス、そしてデータの整合性確保の仕組み)まで踏み込み、最適なパターンを選択できるエンジニアを目指しましょう。

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