
もっち
- 関東大手SIer勤務
- 10システム、仮想サーバ約200台の基幹系システムが稼働する仮想化基盤のインフラ運用リーダー
以下3点について、ブログで役立つ情報を発信
- インフラ技術・システム運用
- キャリア・マネジメント
- エンジニア実務・仕事術


もっち
以下3点について、ブログで役立つ情報を発信
「システムは動いて当たり前」。 顧客がそう思うのは当然ですが、その「当たり前」を支えるのが非機能要件です。
インフラエンジニアとして18年、大手SIerでオンプレ・クラウド計200台規模の大規模インフラを支えるサービスマネージャーとして、私は数多くの「定義漏れ」による悲劇を目の当たりにしてきました。
この記事では、私が実際に経験した苦い失敗談を独立した章として紹介し、その教訓から導き出した「現場で本当に必要な非機能要件の観点」を解説します。
この記事の想定読者
この記事を読むことでのメリット
「まあ、なんとかなるだろう」という甘い見通しが、運用開始後にどれほどの工数と精神的負担を招くのか。私の実体験をお話しします。
あるプロジェクトで、ログの保存期間を曖昧にしたまま運用を開始しました。結果、適切なローテーションが行われず、膨大なログがディスク容量をじわじわと圧迫。ある日突然、ディスクパンク寸前でアラートが鳴り響く事態に陥りました。 「無限」のディスクは存在しません。容量管理は、設計段階での「有限の合意」から始まることを痛感しました。
「いつでも止めていい」という言葉を鵜呑みにし、定期メンテナンス時間を事前に合意していませんでした。運用開始後、セキュリティパッチの適用や再起動が必要になるたび、エンドユーザーとの停止調整に奔走し、毎回多大な労力を費やすことになりました。 運用が始まってから「止めていい時間」を勝ち取るのは、想像以上に困難です。
こうした失敗を防ぐための共通の「地図」が、IPAが公開している「非機能要件グレード」です。顧客とエンジニアの認識を合わせるための最強のフレームワークです。
「システムが止まらずに動き続けること」を定義します。単に「止まらない」だけでなく、止まった時にどうするかまで踏み込むのが現場のポイントです。
「快適に動くか」と「将来の成長に耐えられるか」を定義します。
ここでヒアリングした「ピーク時のリクエスト数」や「目標レスポンス時間」は、サーバーのCPUコア数を決定する重要な変数となります。
集めた数値を具体的にどうスペックに落とし込むか、その計算式については以下の記事で詳しく解説しています。

「日々の運用が回るか」「壊れた時に直しやすいか」を定義します。ここが疎かになると運用チームが疲弊します。
「旧システムから新システムへ、どう安全に移るか」を定義します。
「外部の攻撃や内部の不正から守れるか」を定義します。
「どこで動かすか」「物理的な制約は何か」を定義します。
18年のキャリアを経て、私が最も大切にしているのは、「設計の意図(思想)」を運用チームへ引き継ぐことです。
実機の構成やパラメータ、手順書などは、後から調べたりベンダーに確認したりできます。しかし、「なぜその構成にしたのか?」「なぜその制限を設けたのか?」という設計の方針は、目に見える形で残さない限り、二度と復元できません。
こうした、ドキュメントに残りにくい「設計者の迷いと決断」こそ、運用担当者へきっちりとバトンタッチしてください。それこそが、運用者が現場で迷ったときに立ち返る「指針」になるのです。
非機能要件のヒアリングは、シートを埋めることがゴールではありません。顧客と「リスクとコスト」を誠実に話し合い、運用フェーズでの後悔を最小限にするための「合意」を作ることが真の目的です。
私の失敗談が、皆さんの現場でのヒアリングに少しでも役立てば幸いです。
この記事によって、非機能要件を固めることができたら、いよいよ具体的なサーバー構成の検討(サイジング)に移ります。
ヒアリングした数値を武器に、経営層を納得させるスペックを選定するための「実践ガイド」として、あわせてこちらの記事も活用してください。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!