サーバー構築の現場に立つと、必ず直面するのがディスク構成の壁です。教科書でRAIDの種類を覚えても、実際の案件でどのストレージ構成を選べばいいのかという判断は、運用リスクやコストを理解していないと難しいものです。
この記事では、初心者エンジニア向けにストレージの冗長化技術であるRAIDの基礎から立ち返り、現場で頻用されるRAID 0, 1, 5, 10について、仕組みだけでなく運用上の現実的なメリット・デメリットを深く掘り下げて解説します。
この記事の想定読者
- RAID構成(0, 1, 5, 10)の仕組みと違いを具体的に知りたい
- 現場のサーバー構築で、どの構成を選ぶべきか判断基準を知りたい
この記事を読むことでのメリット
- サーバーの用途(OS用・DB用など)に合わせた最適なRAID構成を自分で選べるようになる
- ホットスワップやスペアディスクなど、実務に直結するストレージの基礎知識が身につく
目次
そもそもRAIDとは?サーバーの信頼性を支えるストレージ冗長化の基礎
サーバーは24時間365日稼働し続けることが求められます。しかし、データを保存するHDDやSSDといったストレージデバイスは消耗品であり、いつか必ず故障します。
1台壊れても止まらないシステムを作る「保険」の仕組み
もし、ディスクが1台しかないサーバーでそのディスクが故障したら、システムは停止し、データは全て失われてしまいます。これは業務システムにおいて許されません。
そこで登場するのが RAID (Redundant Array of Independent Disks) です。
RAIDとは、複数のディスクを束ねて、あたかも1つの巨大で高性能、あるいは頑丈なストレージのように見せる技術のことです。
RAIDの2大目的:耐障害性の向上とパフォーマンスの高速化
複数のディスクを組み合わせることで、主に以下の2つの目的を実現します。
- 耐障害性の向上(冗長化):1台のディスクが故障しても、他のディスクがカバーしてシステムを稼働し続けられるようにする。保険をかけるイメージです。
- パフォーマンスの向上(高速化):データの読み書きを複数のディスクに分散させることで、1台では実現できない速度を出す。分業させるイメージです。
この保険と分業のさせ方の違いによって、RAIDにはいくつかのレベル(種類)が存在します。
現場で使われる「現実的な」RAID構成 4選を徹底解説
ここからは、実務で頻繁に選択される4つの構成(0, 1, 5, 10)について、それぞれの仕組みと、なぜ現場で選ばれるのかを丁寧に解説します。
RAID 0(ストライピング):速度特化、ただし耐障害性はゼロ
- 仕組み:RAID 0は、データを一定のサイズ(ブロック)に分割し、複数のディスクに同時に並行して書き込みます。これをストライピングと呼びます。最低2台のディスクが必要です。
- 運用上のメリット:読み書き共に非常に高速です。ディスクの台数分だけ速度が向上するイメージです。また、ディスク容量を100%フルに活用できます。
- 運用上のデメリット(脆弱性):耐障害性が全くありません。構成するディスクが1台でも故障すると、データは分散して記録されているため、全てのデータが復旧不可能になります。
- 現場での現実的な使い所:サーバーのメインストレージとして使われることはまずありません。一時的な作業用ファイル置き場(スクラッチ領域)など、消えても業務に支障がないデータ領域に限定されます。
RAID 1(ミラーリング):OSインストール領域の鉄板構成
- 仕組み:RAID 1は、2台のディスクに全く同じデータを同時に書き込みます。鏡に映すようにデータを複製するためミラーリングと呼ばれます。
- 運用上のメリット:非常にシンプルで信頼性が高いのが特徴です。片方のディスクが故障しても、もう片方が生きている限り、何事もなかったかのようにシステムは稼働し続けます。
- 運用上のデメリット:2台のディスクを使っても、実際にデータ保存に使える容量は1台分(50%)だけです。コストパフォーマンスは悪いです。
- 現場での現実的な使い所:サーバーのOS(WindowsやLinux)をインストールする領域として、最も標準的に採用されます。OSが起動しなくなるとサーバー全体が停止するため、信頼性が最優先されます。
RAID 5(パリティ分散):容量効率と安全性のバランス型
- 仕組み:RAID 5は、データ本体と同時に、障害発生時にデータを復元するためのパリティと呼ばれる誤り訂正符号を生成し、それらを3台以上のディスクに分散して記録します。
- 運用上のメリット:メリット(効率性):ディスクが1台故障しても耐えられます。RAID 1と比較して、ディスク容量を効率よく使えます。
- 運用上のデメリット:データを書き込む度にパリティを計算する必要があるため、書き込み速度が低下します。リビルド死のリスク:ディスクが故障した後の復旧作業(リビルド)中に残ったディスクが高負荷になり、もう1台が壊れて全データが失われるリスクが、大容量HDDの普及により近年懸念されています。
- 現場での現実的な使い所:ファイルサーバーなどでよく使われます。読み取り中心で、コストを抑えて大容量を確保したい場合に選択肢に入ります。
RAID 10(ミラー+ストライプ):性能も妥協しないDBサーバーの最適解
- 仕組み:RAID 10は、RAID 1(ミラーリング)とRAID 0(ストライピング)を組み合わせた構成です。最低4台のディスクが必要です。まず2台ずつペアにしてRAID 1を作成し、そのミラーペアをRAID 0で繋ぎます。
- 運用上のメリット:RAID 1の高い信頼性と、RAID 0の高速性を両立できます。1台故障しても稼働継続可能で、リビルド時の負荷もRAID 5より軽く済みます。
- 運用上のデメリット:多くのディスクが必要で、利用できる容量は合計の50%です。
- 現場での現実的な使い所:速度と信頼性の両方が極めて重要になるデータベースサーバーのデータ領域として、第一候補になる構成です。
ひと目でわかる!RAIDレベル比較まとめ表(速度・容量・コスト)
| RAIDレベル | 読み込み速度 | 書き込み速度 | 冗長性(故障許容) | 容量効率 | 導入コスト |
| RAID 0 | ◎ 極めて速い | ◎ 極めて速い | × なし | 100% | ◎ 安い |
| RAID 1 | ○ 普通 | △ 1台分 | ○ 1台まで | 50% | ○ 比較的安い |
| RAID 5 | ◎ 速い | △ 低速 | ○ 1台まで | 高い ($N-1$) | △ 普通 |
| RAID 10 | ◎ 極めて速い | ◎ 速い | ◎ 最大2台 | 50% | × 高い |
読み書き速度と冗長性のトレードオフ
速度を求めれば冗長性が減り、冗長性を高めようとすれば書き込み速度やコストに影響が出ます。このバランスを考えるのが設計の醍醐味です。
運用の現場で必須の知識:ホットスワップとスペアディスク
RAIDを組んで終わりではありません。実際に障害が発生した時にどう動くかが重要です。
サーバーを止めずにディスクを交換する「ホットスワップ」
サーバーの電源を入れたまま、故障したディスクを抜き取り、新しいディスクを挿入できる機能です。24時間稼働のシステムでは、業務を止めずに修理するために必須の要件です。
障害時に自動復旧を開始する「ホットスペア(スペアディスク)」
予備としてサーバーに接続して待機させておくディスクのことです。RAID構成内のディスクが故障すると、コントローラーが自動的にこの待機ディスクを組み込んで復旧(リビルド)を開始します。エンジニアが現場に駆けつける前でも自動で復旧が進むため、非常に安全です。
意外と高い?RAID導入コストと筐体選定の注意点
初期費用を考える際、ディスク代金以外にも考慮すべき点があります。
ディスク枚数だけじゃない、RAIDカードやスロット数のコスト
RAID 10やRAID 5を高速に動作させるには、専用のRAIDコントローラー(物理カード)が必要です。また、多くのディスクを挿すためには、それに対応した大型のサーバー筐体が必要になり、全体のコストを押し上げます。
予算別のおすすめ構成パターン
- 予算重視:OS領域をRAID 1、データ領域をRAID 5にするミックス構成。
- 性能重視:全領域をRAID 10で固め、高性能なRAIDコントローラーを採用。
まとめ:もう構成選びで迷わない!目的別の最適解
- OSを入れるなら:RAID 1
- データベースなら:RAID 10
- 大容量データなら:RAID 5(ただしバックアップはより厳重に)
【鉄則】RAIDはバックアップではないことを忘れずに
RAIDはあくまでディスクの「物理故障」に備えるものです。操作ミスによるデータ削除やウイルス感染には無力です。RAIDを過信せず、必ず別の場所へ定期的にバックアップを取得しましょう。