ストレージの基本:物理から仮想ディスクまで〜クラウド時代への橋渡し〜

もっち

  • 関東大手SIer勤務
  • 10システム、仮想サーバ約200台の基幹系システムが稼働する仮想化基盤のインフラ運用リーダー

以下3点について、ブログで役立つ情報を発信

  1. インフラ技術・システム運用
  2. キャリア・マネジメント
  3. エンジニア実務・仕事術

大きなシステムになればなるほど、計算をする「サーバー」とデータを貯める「ストレージ」は、物理的に分けて配置するのが一般的です。

今回は、それらストレージの基本を物理から仮想ディスク、そしてクラウド時代へつながる根幹技術を解説します。

この記事の想定読者

  • サーバサイドにおけるストレージの基礎を学びたい
  • ストレージの具体的な仕組みや裏側までは理解できていない

この記事を読むことでのメリット

  • ストレージの構成概要や利用技術を理解できる
  • 仮想化ボリュームのメリットや注意点を理解できる
目次

サーバーとストレージの「物理的」な関係

通常、私達がよく目にするパソコンなどの端末は、機器の中にCPUやメモリなどのデータを処理する機器と、ディスクなどデータを保存する機器を同じ箱の中に入れています。

しかし、上図のように、大きなシステムでは、CPUやメモリを積んだ 「サーバー」 と、大量のディスクを積んだ 「ディスク(ストレージ)」 を切り離して設置することがあります。

なぜ処理と保存の機器を分けるのか?

サーバーとストレージを分離することで、複数のサーバから同じ領域を共有して読み込ませることができます。また、この後説明する仮想ボリュームという技術を利用することで、柔軟に各サーバにディスクを読み込ませ、それぞれのディスクを拡張することができるためです。

この「分離」という発想が柔軟なインフラへの第一歩なのです。

どうやって繋ぐのか?(FC:ファイバチャネル)

この二つを結ぶのは、一般的なLANケーブルではなく、主に光ファイバーを使った FC(ファイバチャネル) という専用の線です。 「ストレージ専用の高速道路」を通ることで、大量のデータを遅延なくやり取りできます。

どうやってデータをやりとりするのか?(SCSI:スカジー)

FCという道路を通って、サーバーとストレージが会話するための共通ルール(規格)が SCSI です。 「○番地のデータを読み取って!」「はい、了解!」というやり取りは、このSCSIという言葉で行われています。

仮想ボリューム:巨大な箱を「賢く切り分ける」

ストレージの実体は巨大なディスクの塊ですが、そのままでは使いにくいものです。そこで 「仮想ボリューム」 という技術を使います。

  • 切り分け: 巨大なストレージを、論理的に小さなボリューム(CドライブやDドライブのような塊)に分割します。
  • 割り当て: 分割したボリュームを必要なサーバーにだけ紐付けます。

これにより、一つの大きなストレージを複数のサーバーで無駄なく、柔軟に分け合えるようになります。

シンプロビジョニングと重複排除:魔法の「容量水増し」術

仮想ディスクによる恩恵を最大限に活用できる技術。それがここで紹介する 「シンプロビジョニング」 です。

この技術により実際の物理ストレージの容量よりも大きな容量を仮想ディスクへ割り当てることができます。

通常、100GBのボリュームをサーバーに渡すには、物理的にも100GBのディスクが必要です。しかし、シンプロビジョニングを使うと、「実際にはまだ持っていない容量」をサーバーに見せかけることができます。

  • メリット: サーバー側が「100GBある!」と喜んでいても、実際にデータが書き込まれた分(例:50GB)しか物理ディスクを消費しません。
  • 拡張性: 物理ディスクが足りなくなる前に、後からディスクを物理的に追加すれば問題なく。スモールスタートに最適な技術です。

さらに容量を節約する秘密兵器「重複排除」

シンプロビジョニングとセットでよく登場するのが、この「重複排除」という技術です。

シンプロビジョニングが「使っていない領域を水増しする」技術なら、重複排除は「中身が同じデータなら、1つにまとめて保存してしまおう」という技術です。

  • 仕組み: 例えば、サーバーAとサーバーBに全く同じ10GBのOSデータがあったとします。通常なら20GBの物理ディスクを消費しますが、重複排除を使えば「これ、中身が同じだね!」と検知し、物理ディスクには10GB分(1つ分)しか書き込みません。
  • メリット: データが重なれば重なるほど、劇的に物理容量を節約できます。特に、同じようなファイルがたくさん作られるVDI(デスクトップ仮想化)環境などでは、驚くほどの効果を発揮します。
  • シンプロビジョニングとのコンボ:
    1. シンプロビジョニングで、まずは「見せかけの容量」を大きく確保。
    2. 重複排除で、実際に書き込まれたデータもギュッと圧縮。

この2つを組み合わせることで、限られた物理ディスクを最大限に利用することができます。まさにストレージ界の魔法の節約術ですね。

【実録】現場で起きた「物理ディスク枯渇」の恐怖

これまで紹介してきた便利な仮想化技術ですが、私は一度、この技術で冷や汗をかく経験をしました。

システム担当者からの要望に応え、「はい、拡張しますね!」と二つ返事で仮想ボリュームを増やし続けていた時のことです。将来のキャパシティ管理を怠り、物理的な限界を直視していませんでした。

結果、ある日突然、物理ディスクの空きが底をつきかける事態に……。

どう対処したか?

インフラ側だけで解決できる問題ではありませんでした。システム担当者と連携し、以下の「大掃除」を断行し、物理ディスク拡張までの時間を確保しました。

  • クリーンアップ: 長年放置されていた不要なファイルの削除。
  • DB効率化: データベースの構造を見直し、無駄な容量消費を抑制。

この時、「インフラのスペックに頼るだけでなく、プログラムやデータの持ち方自体を見直してもらう重要性」を痛感しました。

まとめ:技術の「光」と「影」を操るエンジニアへ

今回ご紹介したシンプロビジョニングや重複排除は、限られたリソースを最大限に活用するための、まさにストレージ界の魔法のような技術です。しかし、その魔法を使いこなすには、「技術の理解」が必要です。

皆さんに大切にしてほしいポイントを4つお伝えします。

  • 「仕組みそのもの」を理解する 便利なツールや機能は、中身を知らなくても使えてしまいます。しかし、なぜそれが可能なのか、裏側でデータはどう動いているのかという「仕組み」を理解することこそが、エンジニアとしての真の基礎体力になります。
  • デメリットから目を背けない どんなに便利な技術にも、必ず**トレードオフ(デメリット)**が存在します。ストレージを節約できる一方で、処理のオーバーヘッドが発生したり、物理容量が枯渇した際のリスクが大きくなったりします。「光」の部分だけでなく、「影」の部分もセットで理解しておきましょう。
  • 正しく知り、適切に運用する インフラエンジニアの本当の仕事は、技術を導入することではなく、システムを安定して動かし続けることです。仕組みを正しく理解したうえで、日々の監視やキャパシティ管理といった「適切な運用」を怠らないようにしましょう。
  • システム全体を俯瞰する視点を持つ 「インフラ担当だからサーバーとストレージだけ見ていればいい」という考えは捨てましょう。そのインフラの上でどんなアプリが動き、ユーザーにどんな価値を届けているのか。もっと広いシステム全体の視点を持つことで、より最適なインフラ設計が見えてくるはずです。

技術はあくまで手段です。その仕組みを深く理解し、広い視野を持つことで、ただの「設定担当者」ではない、真に頼られるインフラエンジニアを目指していきましょう!


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この記事を書いた人

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